不織布の溶着です。
2009年、鳥インフルエンザが世界的に大流行しました。
俗に言う『パンデミック』です。
この年は、国内の大小様々な企業からマスクの溶着に関する問い合わせが相次ぎ入ってきました。
その問い合わせのうちの大部分は、台湾製の自動機に搭載されている台湾製の超音波の部分だけを、
日本製の超音波に乗せ換えて欲しいというものでした。
台湾製の自動機の構想(超音波のレイアウト)が独特だったので、
工具ホーンを含めた機械の乗せ換えには若干苦労しましたが、問題なく終える事が出来ました。
「そもそも、ただの熱で溶着できているものを、なぜ超音波の摩擦熱をわざわざ利用するのか?」
とお考えの方も多いでしょう。
ここからは、私が聞き及んだ内容と私の推測を交えて答えております。
実際とは違うかもしれませので、そういう目でご一読ください。
まず一つ目は、生産スピードです。
単純に熱のスピードより、超音波のスピードの方が勝っている。
二つ目は、溶着の安定性(設備管理面)です。
熱はどうしても外因の影響を受けたり、温度管理の難しさが付いて回ります。
そういった管理の難しさに比べると、超音波の管理の方が単純で安定し易いというものです。
三つ目は、溶着部分の出来栄えです。
ただの熱溶着の場合は、溶着部は完全にプラスチック化し、その近傍も溶けてしまい、
硬くバリバリになってしまいます。
超音波溶着の場合は、溶着部は不織布の風合いが若干残ります。
また圧力の加わった箇所のみの発熱なので、溶着部近傍はほとんど溶けません。
よって、肌へ触れた時の感じは大きく変わります。
この様なメリットにより、不織布業界も『熱』から『超音波』への置き換えが進んできているという状況です。
最後に付け加えですが、海外(特にヨーロッパ)に比べて国内は熱から超音波への置き換えが進んでいません。
その理由として、日本の熱の機械のレベルが非常に高く、
日本だけで言うと超音波でのメリットが非常に少ないという事があるそうです。
超音波が売れなくて悔しいのやら、日本のレベルが高くて誇らしいのやら、微妙な気持ちではあります。